静かな叫び
大切なものを失うということは、どういうことなのか。
今回紹介するのはこちらです。
『慟哭』著:貫井徳郎
連続幼女誘拐事件が発生。警察の懸命の捜査にも関わらず、解決の糸口さえ掴めない状況が続いていた。そのストレスや批判は捜査一課長の佐伯警視に向けられていく。仕事でもプライベートでも追い詰められていくなか、新たな事件が発生する。
痛ましい事件、噛み合わない人間関係、嫉妬や偏見。物語がすすむにつれて、徐々に濃くなる重苦しい空気。そんな連続幼女誘拐事件の話と平行して、なんだか怪しげな宗教団体の話が書かれています。
そちらは不安になる明るさがあり、重苦しい本編と交互に展開することで、よいリズムで読み進めていけます。この2つの話はどう関係してくのでしょうか。事件は解決するのでしょうか。
【私の勝手なセールストーク】
事件についてというよりも、事件の周りで起きていることや、佐伯という人間について書いている作品です。警察小説とは違います。
1度めよりも、2度め3度めに読んだ時の方が、より深く読めた気がします。苦しみや痛みを一緒に体験しているような、そんな気持ちになりました。途中から、ずっと誰かの慟哭を聞いているような。辛い。とても辛い。
大切なものを失うということはこういうことだ。心の穴は埋められない。支えてくれる何か、引き留めてくれる何かが必要だ。でもそれが何かはわからない。そもそも存在するのかも。
少し読みづらく感じる方もいるかもしれません。でも、だからこそこの重い主題が生きていて、全体に悲壮感をまとえているのだと思います。
貫井さんの作品は、重い方が好きです。軽いタッチの作品も読んだことがありますが、私は違和感を感じてしまい苦手でした。重い作品は、何度も読むにつれて染み込んでくる、そんな感じがします。
さらっと流すともったいないので、じっくりと考えられる時間に読んでほしいです。
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