交わらない想い達
大切な人のためなら、してあげたいことがある。
それは本当に、その人のためなのだろうか。
今回紹介するのはこちらです。
『Nのために』著:湊かなえ
ある夫婦が、自宅で死亡しているのが発見されました。その現場に居合わせた4名の男女の証言から、事件の詳細が判明。無事に解決に至ります。
しかし、彼らにはそれぞれ隠していることがあって…。
誰かが、誰かのために嘘をついている。
それぞれの独白から、事件の真相が明らかになっていきます。
ほぼ全てが、一人称の証言によって成り立っています。客観的な事実はマンションの一室で人が死んでいたことと、登場人物の名前くらいしか出てきません。
その人の視点でしか描かれないため、初めは事件の全体像がわかりません。謎だらけ。それが、2人め3人めと読み進めるうちに、徐々に形になってきます。また、物事の捉え方や、感じ方が各々で異なっていて、リアルな人間関係を垣間見ているようで、面白いです。
タイトルにあるNとは、いったい誰のことなのでしょうか。考えながら読むと、よりいっそう楽しめます。
【私の勝手なセールストーク】
湊さんの作品はいやな後味が残るものが多いですが(それがクセになります)、この作品はそうでもありません。全体を通して、愛が根本にあるからですかね。
そのため、恋愛小説のような雰囲気もあります。愛のようで愛ではないような、微妙な想いが、この事件が起きたポイントになっていると思います。
あの人はこう思ってる(はずだ)から、こうしたい(はずだ)から、こういう人(のはず)だから。
みたいな。
大切な人のためなら、何でもしてあげたい。相手はその事を知らなくてもいい(けど、できたら知ってほしい。感謝してくれたらなおのこと嬉しい)。
みたいな。
無償の愛って難しい。わかりあうって難しい。
よく、死ぬ間際に言わなくてもいいことを言い残したり、わざわざ私が守りましたよアピールして死んだりする場面がありますよね。
人間ってそういうものなのかなぁと考えてしまいました。
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